―佐藤大(以下、佐藤) 僕が最初に菅野さんと仕事したのは、『マクロスプラス』ですね。厳密に言うと一緒にはやってないんだけど。
―菅野よう子(以下、菅野) 一緒じゃないというのはどういうこと?
―佐藤 シャロン・アップル(
注1)のシングル、あれの作詞をやってます。
―菅野 うそっ! 知らなかった!
―佐藤 あの曲だけ菅野さんが音楽をやってないじゃないですか。
―菅野 あれやってたんだ。
―佐藤 それで『マクロスプラス』の時に菅野さんの音楽聴いて。その後の『カウボーイビバップ』の時に初めてちゃんと話したという感じですね。菅野さんは会う前は、坂本龍一さんみたいな“天才ミュージシャン”というイメージを持っていたんですけど、渡辺(信一郎)監督(
注2)に「エド(
注3)みたいな人だよ」と言われて、僕自身がエド担当で主にエドの回の脚本を書いてたんで「それは結びつかないよ!」と。でも実際に会ってみたら、「ああエドだ」って(笑)。
―菅野 (笑)
―佐藤 それですごく安心した。偶然なんですけど、それ以降僕が携わったアニメ作品はほとんど菅野さんが音楽やってるんですよ。そういう意味でも、僕の文章に音を付けてくれる人のイメージは菅野さんなんです。脚本が上がってから曲が付くまでって3〜4ヶ月くらいかな? 結構時間が空くじゃないですか。だからどの曲がどう入るのかとか考えるのが楽しくて。『ブレイン・スクラッチ(
注4)』の時に「描き下ろしで音楽付けるよ」って渡辺監督から聞いてどんなだろうと思って観たら、脚本には書かれていない“救い”みたいなものを菅野さんが音楽で表現してるなと思って、これは有り難いと。
―菅野 うれしい、もう。わたしは佐藤大さんが何してる人かちゃんとわかったのって、たぶん『攻殻S』から(笑)。何回も会ってるんだけど、大さんは雑誌の仕事もやってるからいつも取材関係で会うじゃない? 編集さんやライターさんと区別ついてないのね、だから「雑誌の人かなぁ〜」と(笑)。
―佐藤 (笑)
―菅野 『カウボーイビバップ』のときに『ブレイン・スクラッチ』だけがエンターテインメントなんだけど妙に…なんか変な話だな、と思ったの。暗いとかそういうんではなくて。他の話はファンタジーじゃないですか。あの回だけはファンタジーとは思えなかった。だからすごく妙な感じだなって。音楽作ってるあいだに何回も観るから、それで“脚本 佐藤大”っての見て、アレ知ってる名前だと思って。それで今回の『攻殻S』でようやく「脚本書く人なんだ」と(笑)。ごめんなさ〜い!
―佐藤 (笑)。いやいや、いいですよ。
―菅野 でもね、『攻殻S』の第10話(
注5)はすごく気に入ったよ。
―佐藤 メールを頂きましたね。
―菅野 普段は脚本家の名前なんか意識しないけど、脚本を読み終わって「これ誰だ〜!」って思ったの。そしたら“佐藤大”って書いてあるから「ああ、あいつだ!」って(笑)。それで思わずメールしてしまったんですよ。
――― 絵が出来てから音を考えるものと思っていたんですが、脚本の段階から考えていくものなんですか?
―菅野 今回の『攻殻S』は脚本がすごい早くできていたんで、読まざるを得ずに(笑)。「しょうがねえな〜」とかって読んでたらだんだん面白くなってきちゃった。
―佐藤 (笑)